~ バーズボロー天然ガス火力発電所 ?
バーズボロー天然ガス火力発電所の建設現場
雙日にとって北米市場では初となる大規模発電事業への投資案件。バーズボロー天然ガス火力発電所は、ペンシルバニア州バークス郡バーズボローにて建設が進められている合計出力488MWのコンバインドサイクル方式(*1)の発電所。ジェネラル?エレクトリック(GE)社製の最新鋭のガスタービンおよび蒸気タービンを採用し、完工?商業運転開始予定は2019年5月。運転開始後は米國最大の電力卸売市場であるPJM(*2)を通して米國北東部に電力を供給します。
ガスタービンと蒸気タービンの組合せにより通常よりエネルギー効率を向上させた発電方式 | |
米國を代表する電力卸売市場の一つ。ペンシルバニア、ニュージャージー、メリーランド、ワシントンD.C.などを含む米國北東部13州を管轄 |
環境?産業インフラ本部の現中期経営計畫の目標のひとつは、ビジネスに新機軸を打ち出すことと地域の幅出しによりビジネスチャンスを広げること。本件はその両方にあてはまる案件という位置付けとなります。
雙日が取り組んできた東南アジア、中東灣岸地域でのIPP案件は、20年、25年という長期の売電契約に基づくもので、大化けはしないが堅実で安定した収益性が見込めるスキーム。
一方、今回は、雙日として初めて長期の売電契約が付いていないタイプの投資案件に參入するもの。これはセミマーチャント(*3)といわれ、事業収入の一定割合を3、4年先まで確保ができ、その先は毎年契約を更新することで一定の収入を押さえていくという米國では一般的な事業スキーム?!袱饯Δいσ馕钉扦膝辚攻猡ⅳ毪?、その見返りに長期売電契約のビジネスより高い収益が見込まれることが特徴。地域も広がり、かつ新しいスキームの案件への取組みであり、雙日として初めてこのタイプのビジネスに踏み出すことができた」。電力プロジェクト部の淺野琢司部長はこの事業の意義を説明します。
基本的には電力の自由取引市場の中で、一定の投資支援が得られる制度。詳しくは下記。 |
1年間の発電容量をコミットする対価として実際の発電量には関係なく一定の収入が確約される制度(容量収入制度)を備えた電力卸売市場。容量収入制度は、過去の過度な市場自由化による大停電などの反省から、新規発電所建設に対する投資誘致のためのインセンティブとして、PJMが他市場に先駆けて1999年に導入しました。
そもそも米國市場に目を付けた理由は何か。雙日は東南アジア、中東灣岸地域での発電事業の実績が多々ある中、本部方針として、新しい地域、新しい仕事の分野を作っていこうという大號令があり、そこで米國においてインフラ事業系で何かできないかを現中計で取り組み始めたという背景があります。
「米國は、いうまでもなく市場規模が大きく、かつ制度が確立している。それと、現地に行ってみればわかるがインフラが古い。橋も道路も古い。ハイウェイなどはボコボコ。同じように発電所も古い。60年代、70年代に作ったアメリカが華やかしい頃の発電所で回している。それがもうもたなくなってきていて、新しいものを建てる需要が結構ある。本件はシェールガスを中心としたアメリカのエネルギー革命とインフラ再生に向けた動きがまさに交差したところにある案件だ」(電力プロジェクト部?橫井八満)。
社內的には初めての取組みとなるため、関係者全員がセミマーチャントというスキームを理解するために勉強するとともに、そこにあるリスクを分析する必要があり、事前準備に膨大な時間がかかったといいます。ビジネスモデルの勉強は1~2年前から始め、その流れの中で昨年の9月頃には案件候補を6件ほどに絞り込みました。その案件內容を順番に精査?検討しながら買収のオファーを出していきます。それは機上のものなどではなく、リーガルアドバイザイーや會計コンサルタントを雇うなど大きなコストをかけて行ってきました。
「今回の案件は10月頃からスタディを始めてぎりぎりのタイムラインの中で成約に至った。當社としてはIPP事業の中では過去最大の投資規模であることに加え、雙日としては初めてのビジネスモデルであり、それも米國での挑戦という點では、モニュメント的な事例といえるのではないか」(淺野部長)。
電力プロジェクト部では、昨年の7月頃から、既存の課の枠を取り払った新しいタスクフォースのメンバーで、収益性が高く、早期に収益に結び付く新規案件を発掘しようと動いてきました。本案件はそれが非常にうまく機能して実現した事例だといえます。もちろん、法務部やストラクチャードファイナンス部をはじめとした職能のスピード感を持ったサポート、雙日米國會社の各部署のサポートがあってこそ結実したプロジェクトだといえます。
「非常に濃厚な半年だった。今まで中東地域で攜わってきたEPC案件の契約に比べると契約書の量が比べものにならないくらい多い。EPCの部分を含めて勉強しなければならない領域が広範で大変だった。事業期間が単発の工事案件と比べ何十年も続くことが大きな違いであった」(第二課?武岡 脩)
「このチームに異動して1年でこんな大きなチャンスに巡り會え、商社パーソンとして非常にラッキーだった」(第一課?清水卓哉)
環境?産業インフラ本部では、本件も含めて米國市場でのビジネス拡大を図っていくため、今年度から本部戦略要員としてニューヨークに1名派遣しています。同様に東南アジア、インドを中心に複數名の戦略要員派遣を計畫しています。本部としては、次期中計の中で大きな規模感を持って貢獻できる久々の新規大型案件の受注を契機にして、新規案件の連続受注につなげていきたいと考えています。
「佐藤社長(當時)は?!?、スピード経営の重要さをメッセージとして発信している。本件は初めての案件ということで投資が確定するまで社內的にも紆余曲折がいろいろあったが、結果的にスピード経営が反映された案件だと思っている」と淺野部長。
現在、シェールガスの開発が世界的に非常に盛んになっています。トランプ大統領になってからインフラ開発?整備に拍車をかけようとしています。本件はまさにそういったトレンド案件のひとつになっています。
PJMでは石炭火力発電所や原子力発電所の退役に伴って新設の電力供給源への期待が高まっています。バーズボロー発電所では高いエネルギー効率を持つ最新鋭の機器を採用し、環境負荷を抑えた電力を安定的に供給することで、米國の電力インフラの安定化に貢獻していこうとしています。また、価格的競爭力のある天然ガスを世界で最も多く産出している米國のユティカおよびマーセラス?シェールガス田より調達することで、収益性の確保が可能となります。
雙日は、北米市場では本件が初めての大規模発電事業への投資となります。米國において電力をはじめとする大規模なインフラ投資への期待が高まる中、電力?エネルギー分野で培ってきた実績を基に、今後も積極的に発電事業に取り組んでいく考えです。
「セミマーチャントは將來的に日本でも導入されるかもしれないビジネススキームであり、今回の事例を新たな市場開拓のきっかけにしたいと考えている。また、自由化市場は豪州、シンガポール、トルコ、英國、メキシコなど他の地域にもあり、本案件をテコにして、各國の事情を見極め、検証しながら、同種の案件を応用できる機會を狙っていきたい。そういう點でも非常に大きな意味がある」と淺野部長は締めくくりました。
入社早々、このようにチャレンジングなプロジェクトに関與することできて光栄です。母國アメリカでの重要な投資案件をお手伝いできたことを誇りに思いますし、米國人弁護士としての知識や過去の米國電力案件での経験を活かしてチームを支援できたことをうれしく思います。営業部の皆さんが、新しいプロジェクトモデルを擁し、新市場に果敢に參入する姿はとても印象的でした。今後も「挑戦する営業部」への支援を続けていきます。
淺野 琢司部長
橫井 八満
清水 卓哉
第一課
武岡 脩
第二課
建設現場にて
(所屬組織、役職名等は本記事掲載當時のものです)
2017年12月掲載